性行為感染症(STD)

若年層のSTD(性行為感染症)は増加傾向にあります

梅 毒

梅毒トレポネーマ

黒い背景の中に淡緑色の蛍光を
発する梅毒トレポネーマ

 梅毒はTreponema pallidum(梅毒トレポネーマ)を病原体とする性行為感染症です。トレポネーマは皮膚、粘膜の小さな創傷部位より入り、やがて全身に散布されて梅毒特有のきわめで慢性の経過をたどります。
 病期は通常3期にわけられます。

[第一期]感染後3ヵ月くらいまでをいい、トレポネーマが局所に局在している時期です。侵入局所に初期結節や硬性リンパ節炎ができることがあります。感染後4週間で梅毒血清反応(STS)が陽性になります。
[第二期]その後3年くらいまでの期間です。この時期の特徴は、皮膚・粘膜にいろいろな型の梅毒疹・粘膜疹や脱毛が出てきます。
[第三期]感染後3年以上を経過した時期です。この時期になりますと、皮膚・粘膜だけではなく内臓、中枢神経系など全身の器官が侵されてきます。

 治療はペニシリン、セファロスポリンなどの抗生剤を投与します。早めの治療が必要です。妊婦さんの場合も、早めに治療をすることで先天梅毒児を出産するリスクを抑えることができます。

 

淋 病

淋菌(グラム染色)

赤く染まっているのが、白血球内に
みられる淋菌(グラム染色)

 淋菌(Neisseria gonorrhoeae)によって起こる性行為感染症です。女性では若い年齢層に多発傾向がみられますが、まず子宮頸管炎として発症し、その後子宮内膜炎や卵管炎などの骨盤内炎症性疾患(PID)に進展することもあります。このPIDは不妊、子宮外妊娠などの原因となることがあります。
 淋菌性の子宮頸管炎では定型的な場合は多量の膿性のオリモノをみますが,無症状に経過する潜在性感染も多く、注意が必要です。

 治療は本人のみならず、パートナーも同時に受けるべきで、ペニシリン系、セフェム系、キノロン系などの治療薬で治療いたします。

 

クラミジア感染症

クラミジア感染症

左図の細胞質内にみられるのが「クラミジア基本小体」
右写真は蛍光を発する基本小体(蛍光抗体法)

 クラミジア(Chlamydia trachomatis)による子宮頸管炎、骨盤内感染症(PID)が注目されています。
 クラミジアの感染症では女性の場合、子宮頸管炎が最も多く、淋菌との混合感染も10~20%にみられます。妊婦さんでも5%前後にクラミジアが検出されており、児への垂直感染の問題もおきています。
 クラミジア感染症の特徴は淋菌感染より一段と症状は軽く、なかにはまったく無症状のものもあります。このため発病に気づかず子宮付属器炎に進展したり、不妊症、子宮外妊娠の誘因・原因になることもあります。

 治療は主にテトラナイクリン系、キノロン系、マクロライド系が用いられます。パートナーも同時に治療することが肝要です。

 

性器ヘルペスウイルス感染症

水疱をみる局所と感染細胞(パパニコロウ染色)

左写真は大小の水疱をみる局所
右写真は水疱底から採取した感染細胞(パパニコロウ染色)

 性器ヘルペスウイルス感染症は単純ヘルペスウイルス(HSV)によって発症する疾患です。外陰の病変が目立つため外陰ヘルペスともよばれますが、病変が子宮頸部や膣にも及ぶことがあります。
 HSVは脳、眼、口腔、皮膚など、身体の種々な部位に感染して病変を形成しますが、性器もその標的の1つといえます。HSVには1型と2型とよばれる2つの亜型があり、ヒトの感染部位では2型が性器などの下半身に多いことが知られています。
 不顕性感染もみられますが、顕性感染では水疱や潰瘍形成など比較的強い症状を示します。最初は外陰の掻痒感を感ずることが多いようですが、そのうち激しい痛みを伴ってきます。

 診断は分離培養や細胞診、DNAなどによるウィルス検出によって確定します。治療は抗ウィルス療法、対症療法が主となります。

 

尖圭コンジローム

独特の様相を呈した局所と感染細胞(パパニコロウ染色)

左写真は表面が棘々しく独特の様相を呈した局所
右写真は細胞核の周囲に明庭部を示す感染細胞
(パパニコロウ染色)

 ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)により発症するウィルス性疾患です。このウィルスの特徴は,感染した細胞に増殖性変化を与え,乳頭腫という良性腫瘍をつくることです。女性においては、主に外陰、肛門周囲、膣などに表面が棘々しく角化した独持の腫瘍を形成することから尖圭コンジロームと呼ばれています。
 HPVは現在50種以上の型に分けられていますが、本症には6型と11型が多いことが知られています。また16、18、31、35、52、58型は子宮頸癌、外陰癌の原因ウィルスと考えられています。
 好発年齢は10歳代後半から30歳代前半ですが、ピークは20歳代前半で、全体の約3/4を占めています。近年次第に増加傾向にあり、STDのなかでも、重要な疾患のひとつと考えられています。

 診断は、視診だけでも可能ですが、類似した他の疾患との鑑別のために、細胞診や病理組織診は必須になります。
 治療は外科的切除、電気凝固、冷凍療法、レーザー治療などの他に、ポドフィリン、5-FU軟膏などの薬物療法が行われています。

 

膣トリコモナス症

膣トリコモナス症

 産婦人科のSTDの中で最もポピュラーな疾患の1つが膣トリコモナス症です。この疾患の病原体は膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)と呼ばれるもので、男女の生殖器、泌尿器に感染症を起こすものです。
 黄色膿性あるいは微細泡沫状で悪臭を伴った多量のオリモノをみたり、炎症が外陰部にに及ぶと痒みや痛みを訴えることがあります。また、ときに難治性に経過しますが、この理由は膣トリコモナスが感染者自身の膣以外の性器・尿路と配偶者の尿路・性器に侵入し、有力な再発・再感染の源となるからです。つまり、このようなパートナーとのいわゆる”ピンポン感染”を防ぐためにも、同時に治療することが大切です。

 治療はニトロイミダゾール系の薬剤で、経口ないし局所療法として治療します。

 

ウイルス肝炎

 肝炎ウイルスのA型(HAV),B型(HBV)およびC型(HCV)は,性的接触による体液伝達で感染していく場合が多いと言われています。HAVはいわゆる経口感染であり,HBV,HCVは精液,膣分泌物,唾液などの伝達によります。
 HBVの感染経路としては母児間垂直感染が重要ですが、児へのワクチン・抗体投与により感染を予防することが可能です。

 

サイトメガロウイルス感染症,伝染性単核症

 サイトメガロウイルス(CMV)はヘルペスウイルスの一種で、精液、頸管粘液、尿などから分離されることから、本症はSTDの場合もありうると考えられていますが、ほとんどが不顕性感染であり、垂直感染で新生児が初感染することが多いようです。
 伝染性単核痘はヘルペスウイルスの一種であるEB(Epstein-Barr)ウイルスの感染による疾患で、リンパ節腫脹、異型リンパ球増加などの症状がみられます。STDとしての感染経路は接吻時の唾液で別名キッス病ともよばれています。

 

AIDS

 1981年に初めて報告され、起炎の病原微生物はHIVである。発症の背景には後天的免疫異常があります。近年、STDとしての意義・重要性が一層高まっています。感染者には日和見感染症あるいはカポジ肉腫のほか、発熱、リンパ節腫脹、体重減少、下痢などの症状がみられます。

 

マイコプラズマ

マイコプラズマ

 マイコプラズマによるSTDは、ウレアプラズマ(Ureaplasma urealylicum)、マイコプラズマ(Mycoplasma hominis)を病原体とし、非淋菌性尿道炎、子宮頸管炎の原因菌として知られています。いずれもテトラサイクリン、ストレプトマイシンなどが有効です。

 

アメーバ赤痢

アメーバ赤痢

 アメーバ類に属する赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)を病原体とするのがアメーバ赤痢です。症状としては粘液性血性下痢や腹痛が出現しますが、半数は無症状です。
 本来は熱帯地方に広く分布する疾患で、今までわが国ではまれな疾患と考えられていましたが、海外旅行の普及とともに国内感染例の増加が目立つようになりました。また、直腸内に赤痢アメーバが存在しますので、同性愛男性の間にSTD型の感染が起こることが知られています。

 

外陰・膣カンジタ症

外陰・膣カンジタ症

左写真は難治性カンジタ症の外陰部。
右写真は細胞周囲で淡赤色に染まるカンジダ菌糸。
(パパニコロウ染色)

 真菌によるSTDにはカンジダ(主としてCandida albicans)を病原体とする外陰・膣カンジダ症があります。本来、カンジダは健康人の皮膚、口腔内などに生息し、普通は人体に害を及ぼさないのですが、抗生剤の連用や感染抵抗力が低下したときなどに、異常に増殖して病原性を発揮します。症状は掻痒感、特有のオリモノ、発赤、腫脹などがみられます。

 治療は抗真菌剤によりますが、治療後に再発を繰り返す難治性のカンジダ症もありますので、根気強い治療が必要です。

 

毛じらみ症

ケジラミ

 ヒトシラミ科に属するケジラミ(pediculosis pubis)の寄生により発症し、近年症例の増加が報じられています。虫体は1mm前後で、色調は灰白色ないし灰白黄色を呈しています。成虫の平均寿命は22~28日ですが、毛から離れると2日で餓死し、また衣服で覆われていないと長くは生存できないのが特徴です。
 主に硬毛部である陰毛や肛門周囲の毛に寄生して、皮膚も咬むのでその部に点状紅斑や丘疹が生じ、掻痒感も強くなります。
 また、感染経路は直接毛から毛への接触感染で、陰毛部では主として性的接触による移行によります。
 治療は、痒み止め、駆除剤が主体となります。

 

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なお、当ページは『図説産婦人科VIEW-5 性感染症(メジカルビュー社)』を参考に一部イラスト、写真を引用させていただきました。