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子宮内膜症について

宮内膜症は生理痛や腰痛、不妊症の原因となります

女性性器の構造

女性の生殖器は子宮、卵管、卵巣、膣などで構成され、腹部の低い位置にあって、骨盤で保護されています。

女性性器の構造 I 女性性器の構造 II

月経はどのようにして起こるのでしょうか

 子宮内膜症は月経と深く関連しています。ここでは月経が起こる機序について解説いたします。
 脳の中の脳下垂体と呼ばれるところから卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)が分泌され、このホルモンが卵巣に達すると、その刺激によって卵巣では卵胞(注1)が成熟し、排卵、黄体形成が行われます。
 そして、排卵前の卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が、排卵後には卵胞ホルモンと黄体ホルモン(プロゲステロンなど)の2つが分泌され、それらのホルモンの働きで子宮内膜層(下図の主として機能層と呼ばれるところ)が増殖して厚みを増します。これは受精卵が子宮へ運ばれてきた時に子宮壁に着床しやすくすることと、受精卵への栄養を準備するためです。
 しかし、受精が成立しない場合には、卵子は壊れて子宮分泌液などとともに体外へ排泄されます。また着床準備のために厚みを増していた子宮内膜は剥離してちぎれ、その時に起きる出血とともに体外へ流出します。この現象が月経と呼ばれるもので、この性器の周期的変化は通常28日間のサイクルで起こります。


【*注1:卵胞=卵巣内で卵が成熟していく時、卵の周囲を囲む嚢。中に液を満たして卵を保護し、栄養を与え、卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌する。卵が成熟すれば破れて卵を放出し(排卵)、黄体と呼ばれるものに移行する。】


月経はどのようにして起こるのか

子宮内膜症とはどのような病気でしょうか

 さて子宮内膜症とはどのような病気なのでしょうか。
 下図の模式図をみてもお分かりいただけますように、子宮内膜と同じ構造の組織(単層の円柱状細胞で構成)が、子宮自体(主として筋層内)や子宮から子宮から遠く離れた場所(異所性)に発生し、その場所に定着して女性ホルモンに反応して増殖する病態を子宮内膜症といいます。異所性に発生しても子宮内膜の組織には変わりありませんので、当然のように増殖、剥離、出血という周期的変化を起こし、その結果として種々の病変を呈してきます。


子宮内膜症模式図

子宮内膜症の種類と起こりやすい場所

 宮内膜症の発生原因についていくつかの学説がありますが、ここでは代表的な学説と子宮内膜症の種類について説明いたします。
 ひとつは下図の模式図の左のような内性子宮内膜症(腺筋症ともいいます)です。これはもともと子宮の内腔にあって女性ホルモンの作用によって周期的変化を起こす内膜組織が子宮壁の筋肉のなかに侵入し、子宮筋層内で増殖して病変を作ったものです。これは子宮筋腫と合併して起こる場合も多くみられます。
 もうひとつは月経血とともに体外に排泄されるはずの内膜組織片が、逆行して卵管を通って腹腔内に散らばり、その辺りにある卵管、卵巣、膀胱、結腸などに付着して、そこで増殖するもので、下図の右のように外性子宮内膜症(異所性子宮内膜症ともいう)といいます。


子宮内膜症の種類と起こりやすい場所

子宮内膜症の症状

 これらの子宮内膜症が起こりますと、月経困難症(注2)、腰痛、下腹部痛、性交痛、過多月経、不妊などが起こります。30〜40歳代に多く発生しますが、最近ではより若い女性にも数多くみられるようになり、女性全体でも多発傾向にあります。


【*注2:月経困難症=骨盤痛、腰痛、下腹部痛、悪心、嘔吐、下痢、不快感など、月経に随伴する一種の症候群をいう】

子宮内膜症の進行度

進行度1

進行度1

最も初期の段階の外性子宮内膜症です。
子宮や卵管、卵巣の表面に内膜組織片が
付着してブルーベリー様の病変をみます。

進行度2

進行度2

ブルーベリー様の病変が固いシコリに
なります。
この段階までに適切な治療が必要です。


進行度3

進行度3

この段階では骨盤内臓器の癒着がひどく、
卵巣は腫大し子宮も癒着して少ししか動か
なくなります。

進行度4

進行度4

腫れた卵巣が破れ、中からチョコレート状
のドロドロとした液(古い血液)が出るほか、
他の臓器も形が崩れたり癒着したりして、
骨盤のなかがひと塊となってしまいます。
ここまで進行すると子宮や卵巣を摘出する
手術が必要になってきます。


実際の症例では

進行度4の摘出臓器です。
大きく腫大した卵巣の中はチョコレート状
のドロドロとした液で満たされています。

左臓器の一部分を病理組織学的に観察
したものです。中心部の空隙を縁取って
いる濃い紫色の部分が内膜組織であり、
付着した場所で増殖していることがうか
がわれます。(倍率:100倍)


子宮内膜症の診断

 問診では、月経痛や月経過多、下腹痛、腫瘤感、腰痛、不正出血、不妊などの確認をいたします。これらは他の婦人科疾患でも起こりますが、周期的に起こり月経との関連が認められれば内膜症を疑う有力な根拠となります。内診所見では圧痛を伴う硬結の触知、子宮の移動性の制限、子宮頸部移動時の疼痛、癒着による子宮後屈などが特徴的です。
 経腟超音波診断法では微細な骨盤内病変に対して診断が可能であり、内膜症の診断とりわけチョコレート嚢胞では多彩なエコー像を呈することから、有力な手段になっています。また血中のCA125、CA19-9などの腫瘍マーカーを診断の補助と治療効果の判定、治療後の再発監視を目的として測定したり、CT、MRIなどの画像診断も行われています。
 以上の所見を総合的に判断し、内膜症と他の病変の鑑別、内膜症の進行度などを推定します。これらの臨床的手段により診断された内膜症を”臨床的内膜症”と呼んでいます。

 内膜症の確定診断は腹腔鏡か開腹による直視的所見により行います。近年では内膜症の初期の病変やブルーベリースポット(blue berry spots)まで腹腔鏡による観察で診断可能になっています。

子宮内膜症の治療

 内膜症は性成熟期の女性に好発しますので、治療方法の選択にあたっては患者様の症状、年齢、進行度、妊娠の希望などを考慮いたします。つまり薬物療法、手術療法またはそれらの組合せによる場合でも、疼痛の改善、病巣の摘除や妊娠成立の回復も常に念頭において治療いたします。

 薬物療法は主としてプロスタグラジン合成阻害剤(イププロフェン、ポンタールなど)などによる疼痛に対する対症療法と、ダナゾール、GnRHアゴニスト、偽妊娠療法などのホルモン療法とに大別されます。
 ダナゾールはボンゾールと呼ばれる薬剤であり、内膜症病変を委縮に導く作用があります。GnRHアゴニストにはスプレキュア、ナサニール、リュープリンなどの薬剤があり、これらの主成分であるペプチドホルモンは経口投与では吸収されないために皮下注射もしくは点鼻投与を行います。これらの薬理作用は二次的な下垂体からのゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)分泌低下を起こし内膜組識の委縮を導くものです。
 いずれも内膜症の病変を根治出来るものではなく、これらの薬剤で症状を軽減したり進行を一時的に止めるもので、いったん薬物治療を止めると再発ということもありえます。副作用は低エストロゲン状態によるのぼせ・ほてり・不正出血・肩こり・頭痛・頭重感などの更年期様症状が殆どです。


もう少し詳しく知りたい点や疑問なことがございましたら、Q&Aのフォームからご質問ください。


なお、当ページは(株)田辺製薬提供によるアトラス集よりイラストを引用しています。